開催趣旨

春季研究会は、CIECが扱う研究分野に関して研究発表会を行い、会員の成果発表・情報交換の機会を増やし、会員相互の交流を促進するとともに、会員相互の研鑽に資することを目的として研究委員会が開催しているものです。本研究会で発表される報告は、事前に査読・審査され、「CIEC研究会報告集Vol.8」として発行いたします。

あらゆる分野の人々が、学びとコンピュータやネットワーク利用の在り方とその可能性を考え、研究発表や実践事例の成果を聞くとともに議論に参加していただければと考えております。会員・非会員を問わず、みなさまの積極的な参加をお待ちしております。

参加費

CIEC 会員は無料、その他の方は500円 となっています (どなたでもご参加いただけます)。
CIEC 研究会報告集 Vol.8:2,500円(税込)(当日限定価格)

プログラム

開会の挨拶 (13:00 ~ 13:05)

セッション1:情報教育とICTの活用[座長:大岩 幸太郎(大分大学)]

■実践論文(13:05~13:30)
ゲーム機でのネット接続を題材とした情報モラル授業の開発と評価 ‐アニメーション教材の活用と話し合いを中心としたプログラム‐
敬愛大学 阿部 学 / NPO法人 企業教育研究会 竹内 正樹 / 千葉大学 古林 智美
株式会社 ソニー・インタラクティブエンタテインメント 福永 憲一

■資料(13:35~13:55)
授業における日経パソコンEduの活用と評価
獨協大学 立田 ルミ

■萌芽論文(14:00~14:20)
知覚認知/認知表現の違いと学習方略の差異 ‐ICT活用のための学びの個性を考える‐
早稲田大学高等学院 吉田 賢史 / 甲南大学 共通教育センター 篠田 有史
NPO法人アクティブ・ラーニング・アソシエーション 大脇 巧己 / 甲南大学 松本 茂樹

休 憩 (14:20 ~ 14:30)

セッション2:学習支援システム[座長:皆川 雅章(札幌学院大学)]

■萌芽論文(14:30~14:50)
日本語学習における誤りの共有と学びあいによる協同学習法とその実践
三重大学 張 莉・北 英彦

■研究速報(14:55~15:10)
ことばの組み合わせを学ぶためのタブレットアプリケーション
三重大学 北 英彦・松岡 勇斗・舟橋 恭平 / 鈴鹿市立鼓ヶ浦小学校 勝井 まどか

■萌芽論文(15:15~15:35)
色彩分析機能を持つ色彩学習システム
金沢工業大学大学院 石川 智久・ 鎌田 洋

■萌芽論文(15:40~16:00)
双方向授業システムにおける高精度化と学生の特定機能の試み
金沢工業大学大学院 吉川 桂太郎・山田 圭祐・鎌田 洋

閉会の挨拶 (16:05 ~ 16:10)

研究会報告集編集委員(研究委員会委員)

委員長:
森 夏節 (酪農学園大学)
副委員長:
菅谷 克行 (茨城大学)
委員:
安藤 明伸 (宮城教育大学)  大岩 幸太郎 (大分大学 名誉教授)  興治 文子 (新潟大学)  橘 孝博 (早稲田大学高等学院)  立田 ルミ (獨協大学)  土肥 紳一 (東京電機大学)  布施 雅彦 (福島工業高等専門学校)  皆川 雅章 (札幌学院大学)  吉田 賢史 (早稲田大学高等学院)

Special第8回は、2016年末に開催されたZ会が米Make Schoolと共同開催した英語によるプログラミング講座の取材記事「Z会✕Make Schoolプログラミングスクール『Winter Academy』取材報告―Z会が見据える英語✕ICTという“学びのインフラ”―」を4回に分けてお送りします。ぜひご覧ください。



2020年度から必修化される小学校でのプログラミング教育実施に先立ち、Z会が本場シリコンバレーのプログラミングスクールとタッグを組んで全編英語の講座を開講した。Z会が考える21世紀型スキルの育み方と意義とは?白熱の教育現場を取材した。

取材・文責:木村修平(立命館大学生命科学部 准教授)

«« この記事をはじめ(1/4)から読む

1日目、午後の部:Make Academyの充実した教材

昼食を終えて午後の部が始まった。受講生たちのMacはWi-Fiに繋がっており、Slackチャンネルでの挨拶も済んだ。時間のかかるXcode最新版へのアップデートも終わった。いよいよプログラミングの学習が始まる。

教材はMake SchoolのOnline Academy上に用意されている。Online Academyは誰でも無料でサインアップ可能で、ログインすると教材に自由にアクセスできる。

この教材は独習可能なように設計されていて、筆者も少しやってみたが、非常に出来が良い。解説用のテキストや図表による説明が充実していてわかりやすい。単元は細かくブロックに分割されていて、理解したらブロック左下の”MARK AS COMPLETE”と書かれたチェックボックスをチェックする。これにより進捗状況が把握できる。



丁寧でわかりやすいMake Schoolのオンライン教材


興味深いのは、上記のようなテキストと画像というベーシックな教材以外に、Playgroundファイルが用意されている点だ。PlaygroundはXcode ver. 6から実装された機能で、ビルドなしでリアルタイムでSwiftのコマンドを実行できる、いわゆるREPL環境 (Read-Eval-Print Loop) である… と説明するよりも実際の画面を見ていただくのがわかりやすいだろう。



XcodeのPlayground機能を用いたMake Schoolの教材。


Make Schoolでは単元ごとに対応したPlaygroundファイル(*.playground)が用意されており、ダウンロードしてXcodeで開くと上図のような画面になる。左側には解説が書かれており、ところどころ学習者が数値や命令を入力できる部分がある。入力された情報は自動的に右側の画面内に反映される。この教材の場合、画面の上から落ちてくる黄色の箱が落ち始める位置情報を左側で指定する。白い箱にぶつかるようするには落ち始める座標の値にどういう数値(変数)を入れればいいのか、何度も入力して確認することができる。

Make SchoolのOnline Academyにはこうした教材が約30単元分用意されている。そして驚くべきことに、豊富に用意されているPlayground教材のおそらくほぼ全てが、GitHubで管理・公開されている。正直、恐れ入ったという他ない。英語でプログラミングを学ぶ大きなメリットは、英語圏の豊かな学習リソースにアクセスできることだと改めて痛感した。

教え合いと対話を重ねて理解を深めていくスタイル

午後の部が始まるとき、講師から今後の学習を進めていく上でのルールが提示された。まずは「助け合う」こと。これは午前中にも強調されていたことだ。次に「講師の助けを借りずに友人同士でわからないことが解決したらお互いに褒め称え合おう」。最後に「Google検索を上手に使おう」。講師いわく、「答えを見つけることが目的ではない。学習を進めていて詰まったときに自分で解決できることが大切なんだ」。

この最後の点に筆者は強い共感を覚える。検索して解決策を探すというのは、楽をして答えを見つけ出す行為として日本ではしばしばネガティブに受け取られがちだが、必ずしも安易な方法というわけではない。web上の膨大な情報の中から適切な情報を探し出し、学習の前進に役立てることができるというのは、講師が言うように、自分で道を切り拓くための重要なスキルだ。筆者もかつてコンピュータの勉強に寝食を忘れて取り組んでいたとき、Google検索にどれほど助けられたかわからない。

「Google検索でもわからないことがあれば、講師を呼ぶか、あるいはSlackのチャンネルに気軽に投稿してほしい。待っていちゃダメだ。自分から動くんだ。」

時に教え合い、時に講師を呼び、時にGoogleで検索し、時にSlackにメッセージを投げながら、受講生たちは集中して単元の学習をすすめる。繰り返しになるが教材も会話もすべて英語だ。教材の英語は日本の中学生向けに書かれているわけではないので中には難しいのではと思える表現も見受けられるが、受講生数人に尋ねたところ、「わからないところは辞書を引いたり、前後の文脈から推測して意味を把握しています。特に問題はないです」とのこと。

ある程度の時間が経ったところで、テーブルごとに講師の一人のもとへ集まる。この時ばかりはMacを持たず、文字どおり身一つで講師を中心に車座になる。「今の単元で、みんな何を学んだかな?どこかわからないところや、疑問に思うことはないかな?どんなことでも言ってみよう」と講師は発言を促す。こうすることで、同じテーブルで学ぶ受講生同士で学習内容を復習し、共有しているのだ。プログラミングを学びつつ、参加者同士が対話を重ねることで、互いの信頼感とモチベーションが醸成されていく様子が傍目にもよくわかった。


単元を終えるごとに設けられる講師との対話セッション

教え合い、学び合い、話し合いながら、受講生たちは9:00から17:00まで、5日間にわたる高密度な学習を続けた。

最終日:次は何だ?(What Next?)

最終日の様子は、Z会から提供された記録動画で確認させてもらった。受講生各自がXcodeで自作したiOSゲームを発表する。筆者が取材した初日に比べて受講生たちはずいぶんリラックスしている様子で、笑い声の絶えない発表会だったようだ。


最終日の発表会の様子。(Z会webサイトより)

修了式では受講生ひとりひとりが挨拶を行い、温かい拍手が送られた。印象的だったのは、受講生の多くが今回の講座で新しく友人ができたことに感謝し、学習を継続したいという旨の発言をしていたことだ。中にはアメリカのMake Schoolへの”留学”を希望する人もいた。

「次の段階(next step)へ進みたい」「次の機会(next time)が楽しみ」、修了式では受講生たちが異口同音に”next”という単語を口にした。そしてそれは、最後に挨拶を述べたMake Schoolのアルヌセン氏も同じだった。

「短い期間だったけど、みんな本当によくがんばった。でもこれで終わりじゃない。この5日間はまだほんの入り口だ。次はなんだろう?(What next?)皆さんはもうMake Schoolコミュニティの一員だ。僕たちMake Schoolのミッションは『作り続けること』(Never stop making)。オンライン教材にはいつでもアクセスできる。今回は参加してくれて本当にありがとう!」


この原稿を執筆中、Z会関連の2つのニュースが飛び込んできた。ひとつめは、世界最大規模のMOOCプラットフォームを運営するCoursera社との業務提携(PR資料)。そしてもうひとつは、Z会✕Make Schoolプログラミングスクール第3弾となるSpring Seminar 2017の開催決定だ。英語とICTをインフラとした、Z会が見据える次なる学びの世界が広がり始めている。



2020年度から必修化される小学校でのプログラミング教育実施に先立ち、Z会が本場シリコンバレーのプログラミングスクールとタッグを組んで全編英語の講座を開講した。Z会が考える21世紀型スキルの育み方と意義とは?白熱の教育現場を取材した。

取材・文責:木村修平(立命館大学生命科学部 准教授)

«« この記事をはじめ(1/4)から読む

Z会スタッフインタビュー

昼食後、Z会側の中心スタッフおふたりにお話を伺うことができた。まずは、ICT事業部部長で執行役員の草郷雅幸氏に訊いてみよう。

Z会といえば難関校受験の通信添削指導というイメージが強いと思うのだが、そもそもなぜZ会がプログラミング教育を行うのだろうか?この疑問に対する草郷氏の回答は実にクリアだ。


Z会では、未来の社会を築き、そこでたくましく生きる人々に本物の学力を身に着けてほしいという願いをもって、これまで教育をお手伝いしてきました。Z会が考える本物の学力、それは『自ら明日をひらく力』です。具体的には、自ら学び、考え、調べ、表現し、判断できる力。プログラミングの学習はまさにこれらの力が総合的に育める機会だと考えています。

草郷氏が言う「本物の学力」とは、換言すれば、昨今耳目に触れることの多い21世紀型スキルや課題解決能力と言えるかもしれない。実際、総務省が2014年に実施した「プログラミング人材育成の在り方に関する調査研究」においても、育成が期待される能力として論理的思考力や課題解決能力などが挙げられている。

Z会のこうした考えに共鳴したのがMake Schoolだったという。


Make School社では、プログラミングを実社会の課題解決に結びつけることをはっきりとミッションに掲げています。この点が私どもZ会の理念と共鳴し、2016年夏のSummer Academy開講に繋がりました。Make Schoolの特徴は、現役バリバリのエンジニアが講師を務めていることで、自然と教授内容にも実際のビジネスの現場で導入されている最新技術の情報が反映されます。プログラミングの知識は自分たちが生きている社会と地続きであることをまず知ってほしいという思いがあります

Z会とMake Schoolの最初のコラボレーション講座の手応えはどうだったのだろう。


Summer Academyは3週間と長丁場で、今回と同様に全日程を英語で行いましたが、ドロップアウトされた方は一人もおられませんでした。また、アンケート結果も好評でした。コードを学ぶだけでなく実際に何かを産み出す喜びを見出してくれた方が多かったのが嬉しかったですね。

次に、ICT事業部指導課でプログラミングを担当しておられる岸上真衣氏に、具体的な指導内容やレベルについて伺った。

参加条件にMac持参を指定しているのは異色だと思われるがどうなのだろう?


確かにそうかもしれません(笑)。でも、MacとSwiftに限定していることで差別化できている部分もあるかと思います。Macをお持ちでない方にはオプションで貸し出し機をご用意していますが、今回の受講生の皆さんはほとんどご自身のMacを持参されています。

ここで少し余談ながら近年のICTエンジニア業界におけるMacの存在感の高まりについて触れておきたい。2016年に行われた調査によると、開発者が用いるデスクトップ用OSとしてOS X(現在のmacOS)が初めて最も高いシェアを記録した。Mac人気の背景を語る上で欠かせないのはiPhoneの爆発的なヒットだ。2007年の発売以来、iPhoneは世界で累計10億台が売れた。これによりiOS用アプリ開発の需要も急速に高まった。iOS用アプリはMac上の開発環境(Xcode)と開発言語(Swift)がないと開発できないため、開発者のあいだにMacが広がった。また、BSDベースのOSを持つMacは開発環境の整備やメンテナンスがしやすいのも開発者に支持されたと思われる。

ITの世界は移り変わりが激しいので今後もMacやiPhoneが使い続けられるかどうかはわからないが、少なくとも2016年の時点でMacとSwiftを用いることは、ややハードルは高いものの、理にかなった選択と言えるだろう。実際、Make Schoolの講師もスタッフも全員がMacパソコンを使っている。

肝心のプログラミング指導についてはどう考えておられるのだろう。受講生の中には前回のSummer Academyからのリピーターもいるようだが、初めてプログラミングを学ぶ人もいるようだ。


プログラミング教育では段階的な一斉授業という形式が難しいと思います。そのため、受講生同士で教え合い、学び合うスタイルが大切だと考えています。Summer Academyでもそうした光景が見られました。


教え合いはMake Schoolのスタッフも強調していたが、それでは教える側の受講生はストレスを感じるのではないだろうか。


そこで重要なのが上限や成果物を決めないことだと考えています。あらかじめ決められたものを作りましょうと上限を決めるのではなく、青天井でどこまでも学べる環境を用意することで、進みの速い人はどこまでもチャレンジしていけるようにしたいと考えています。そうしているうちに行き詰まると、講師や友人やSlack上で相談して解決の糸口を教えてもらえます。プログラミングに限らず、学びとは一人でできることではありません。他者に教え、他者から教わる体験を通じて、リーダーシップやコミュニケーション力を育むことも講座の重要な目標だと考えています。

では、英語のレベルについてはどうだろうか。面接を行っているとはいえ、中にはついていけない受講生もいるのではないだろうか。


受講生の中にはインターナショナルスクールの生徒や帰国子女の方もおられますが、もちろんそうでない方もいます。参加条件には英検2級程度(高校卒業レベル)と書いてありますが、中学生の参加者もたくさんおられます。むしろ大切なのは、併記しております『英語でのコミュニケーションに抵抗感を持っていないこと』だと思います。ですから面接におきましても、まず英語でメッセージを伝えようとする意志があるかどうか、そのために英語を主体的に学ぶ意欲があるかどうかを重視しています。

最後に、保護者である大人たちが今回の講座に対して抱いている期待や反応はどうなのだろう。再び草郷氏に訊いた。


本講座に関心をお寄せいただいている保護者の方々には、いくつか共通しているお考えがあるように思います。ひとつには、プログラミングや英語をこれからの時代に必要不可欠なスキルと考えておられる点です。また、海外大学への進学を視野に入れておられる方が少なくないという点です。

筆者はこの日の夕刻、受講生の送迎に訪れた数人の保護者に許可をいただいて匿名のインタビューを行ったのだが、ほぼ例外なく草郷氏がいま述べた共通点を持っておられた。すなわち、プログラミングと英語を、個別の教科ではなく、いわば次世代の知的生産のインフラストラクチャとして捉える視点。Z会とMake Schoolが照準しているのは、そういう視点を持つ層なのかもしれない。


今の子どもたちが大人になる20〜30年後、彼・彼女たちの60%以上は今存在していない仕事に就くと言われています。多くの領域で既存の枠組みが急速に転換しています。冒頭でお話した本物の学力がますます重要になるのだと思います。今回のWinter Academyに先立ってMake Schoolの共同創業者でCEOのジェレミー氏が来日して講演をしてくれたのですが、同じ趣旨のことを強調していました。

今後のプログラミング教育の事業展開についてZ会はどう考えているのだろうか。


まだ詳しいことはお話できませんが、いろいろな可能性を探りたいと考えています。今回は首都圏からの参加者が多いですが、将来的には関西でも開催したいと思っています。近い未来に、私どもの講座で学んだ受講生が教える側になって戻ってきてくれたらとても面白いでしょうね。

次のページに続く



2020年度から必修化される小学校でのプログラミング教育実施に先立ち、Z会が本場シリコンバレーのプログラミングスクールとタッグを組んで全編英語の講座を開講した。Z会が考える21世紀型スキルの育み方と意義とは?白熱の教育現場を取材した。

取材・文責:木村修平(立命館大学生命科学部 准教授)

«« この記事をはじめ(1/4)から読む

講座初日レポート

前置きが長くなったのでそろそろ講座初日の模様をお伝えしたい。2016年12月25日(日)、クリスマスの日曜日ということもあってか都内といえども人影の少ない午前9時、 Winter Academy受講生たちがZ会御茶ノ水教室に集合した。今回の受講者数は28名。そのうち中学生と高校生が半数以上を占め、最年少は12歳だ。その他にも大学生が若干名、社会人の参加者も1名おられた。

予想以上に手加減なしだったMake Schoolスタッフの英語

受講生は3つのグループに分かれてそれぞれのテーブルに着席。メンバーの年齢や性別は多様性を持たせるためバラバラだ。ほどなくしてMake School運営スタッフのジョーダン・アルヌセン(Jordan Arnesen)氏の司会によるオリエンテーションが始まった。自己紹介によると、アルヌセン氏自身がMake Schoolの”卒業生”だそうだ。UCバークレーを卒業後、複数のIT企業でエンジニアとして勤務し、現在はフルタイムの講師としてMake Schoolで働いているとのこと。

次にアルヌセン氏による講師陣の紹介。今回指導にあたるのはルーク・ソロモン(Luke Solomon)氏とジェイソン・カッツァー(Jason Katzer)氏。どちらも現役のソフトウェアエンジニアだ。クリスマス休暇を利用しての参加だという。


Make School講師陣。左から、ソロモン氏、アルヌセン氏、カッツァー氏。(Z会webサイトより)

続いて講座スケジュールの説明。1〜3日目はプログラミングの基礎を学び、4日目にはゲームを作成、最終日の5日目には発表会と閉会式を行うそうだ。

オリエンテーションはどんどん進む。受講上の諸注意、Wi-Fiへの接続、プログラミング開発環境「Xcode」のアップデート、受講者とスタッフ全員で身体を動かしてアイスブレイクのゲーム…。

こうして文字にしてみるとテキパキ順調に進んでいるように思われるかもしれないが、上記の説明や指示はすべて英語で行われていることにご留意いただきたい。日本語はほとんど全く用いられない。Make Schoolスタッフの話す英語は、スピードや単語選びに多少の”手心”は垣間見えるものの、筆者が予想していた以上に手加減なしだった。それでも大半の受講生たちは食らいついているようで、さすが英語面接をパスしただけのことはあると驚いた。

Make Schoolが行動規範として強調する「他者への敬意」

オリエンテーションの中で特に興味深かったのは、アルヌセン氏が Make Schoolの歴史を簡単に説明する中で同社の行動規範(Code of Conduct)を明確に説明し、中でも”Respect each other.”(互いに敬意を払うこと)という点を強調したことだ。

同じ場所に居合わせる他者に敬意をもって接することは一般的な社交上のプロトコルだが、Make Schoolではそれに加えて、学習速度の個人差への配慮もこの文言に含ませている。これはプログラミング学習を複数人数で行う上でとても重要な点だ。

筆者もかつて大学で情報処理を教えた経験があるのでわかるのだが、情報の学習というのはかなり個人差が出やすい。たとえばキーボード入力ひとつをとっても、パソコンに慣れ親しんできた人とそうでない人とでは入力スピードに相当の差がある。いわゆるITに強い人とそうでない人とで会話がまったく噛み合わないというジョークをSNSなどで目にされた方もおられるだろう。これがプログラミングとなると、できる人とそうでない人とでは驚くほど差がつく。

シリコンバレー発の人気スクールが学習者間の習熟スピードの違いという課題とどう向き合うのか大変興味深かったのだが、アルヌセン氏の答えは明快だった。「早く進めた人は行き詰まっている人の相談に乗ってあげよう。相談に乗ってもらった人は感謝しよう。お互いに敬意を払い合い、プログラミングは楽しいということをみんなが知ることができるように協力しよう。」

誰が上で誰が下ということもなく、互いに教え合い、分け合い、支え合い、協力し合う。甘っちょろい美辞麗句を連ねているだけのように聞こえるかもしれないが、なるほど、確かにこれはシリコンバレーの文化かもしれないと筆者は思った。有名な例としては、PayPal初期の創業者たちがeBayによる買収で離職した後も強い絆で結ばれ、時には協力し合い、数多くの事業で大成功をおさめた話がある。起業によって大成功した人がエンジェル投資家として次世代の起業家を支援するという話も有名だし、プログラマー同士が技術的な日々の問題を助け合うQ&Aサイト「Stack Overflow」は連日大盛況だ。

アルヌセン氏は続ける。「うまくいかないことが続いても、決して”imposter syndrome”(偽者症候群)に陥ったりしないように。偽者症候群というのは、何に対しても自信がなくなることだ。自分を過小評価するのはよそう。うまくいくときもあれば、うまくいかないときもあるんだ。うまくいってるときなんか、きっと自分は神なんじゃないかって思うよ(笑)」

その他にも、”things to avoid”(避けるべきこと)として、相手に嫌味を言うこと(sarcasm)、辛辣にこき下ろすこと(put downs)、驚いたふりをすること(feigning surprise)、本音を後出しするようなフレーズを使うこと(using “well, actually”)、相手の考えを退けること(dismissing ideas)が確認され、反対に”things to do”(行うべきこと)として、積極的に関わろうとする姿勢(be inclusive)、相手の気持ちに共感すること(empathize)が強調された。

ちなみに、Make SchoolのCode of Conductは、ハッカソンを円滑に行うためのルールを規定したThe Hack Code of Conductに基づいているという。このドキュメントはGitHub上でオープンに管理されている。このようにリソースをオープンにして共有するというのもシリコンバレー文化の重要な側面だろう。

受講生はSlack上のMake Schoolコミュニティに参加

オリエンテーションの終盤、受講生たちはSlack上のMake Schoolチーム内に設置された講座用チャンネルにアクセスするよう求められた。Slackはプログラマーやエンジニアを中心に人気を集めているチャット型メッセージングサービス。チャンネルと呼ばれるグループを手軽に設置することができるほか、パワフルな会話履歴検索、豊富なショートカットキー、見やすいソースコード表示など、プログラミングに携わる人に便利な機能が満載だ。受講生はこのチャンネル内で疑問に思うことや気晴らしのコメントを自由に書き込める。

SlackのMake Schoolチームに登録された今回の受講生たちは、スタッフの言葉を借りれば「Make Schoolコミュニティの一員」なのだそうだ。筆者には、これは実に魅力的な特典に思える。というのも、Make Schoolは講座に参加した人々のコミュニティをとても大切にしているからだ。同社のサイトには同窓生のページがあり、個人の写真とプロフィールに加え、LinkedInなどのビジネスSNSのアカウントなどへのリンクが添えられている。人間同士の繋がりを重んじるシリコンバレー的な人脈作りの足がかりとして、世界中から参加者が集うMake Schoolコミュニティへの参加は得難い特典ではないだろうか。


受講生の指導にあたるカッツァー氏


ここまでで午前中は終了。3時間があっという間に感じるほど情報量の多いオリエンテーションだった。

次のページに続く