若林靖永 (京都大学経営管理大学院経営研究センター長)


CIECは1996年7月に設立されました。大学生協がアップル社マッキントッシュを販売する事業を開始するなかで、HELP計画を展開するようになり、そのなかで大学教育等でのPC活用について学び交流するPCカンファレンスが始まりました。その積み重ねを経て、CIEC(旧名称 コンピュータ利用教育協議会)が設立されました。

CIECは、コンピュータ、インターネットの登場で教育を革新するという展望をめざす団体として設立され、大学教育等でのPC利用、大学等でのインターネット情報基盤整備などについての成果を発表し、学び交流する学術団体です。

その後、PCカンファレンスを全国大学生協連合会と共催開催し、学術雑誌『コンピュータ&エデュケーション』を年2回発刊して、成果の発表・交流等をすすめてきました。また、小中高の教員による部会、外国語教育部会、大学生協職員部会など部会という自主的な集まりが生まれ、北海道や九州での地域PCカンファレンスが展開され、北海道支部、九州支部ができました。

現在、PCおよびインターネット、そしてスマートフォンなどはすでに広く普及し、教育におけるIT革新、EdTechはさらなるイノベーションを遂げようという挑戦がすすめられています。文科省・新学習指導要領、経産省・未来の教室とEdTechなど、さらなる教育改革がすすめられようとしています。

このような状況のなかで、CIECはすでにパイオニア、トップランナーではなくなっているのではないか、というのが私の現状認識であり、危機感です。CIECのミッション、ビジョンを再定義するべきであろうと思います。

そこで私が考えるのが2つの戦略と2つの課題です。まず、2つの戦略のうちの、第1の戦略は、データドリブンの教育イノベーションを核とした教育研究・教育実践を推進するというものです。ID(インストラクショナルデザイン)のアプローチをデータサイエンス、ビッグデータによって高度化するというのがそのねらいです。データにもとづいて個別学習者に応じた最適化した学びの支援が行われるというようなものです。第2の戦略は、人間が成長していくことの本質に注目して、越境学習等に関する教育研究・教育実践を推進するというものです。人間が自分にとってすでになじみのある世界(コンフォトゾーン)のうちにある限り、課題は与えられず、自己革新の機会が得られません。「越境」によって新しい学びを得、主体性、創造性、他者への理解と寛容を高める教育に注目します。

2つの課題のうち、第1の課題は産官学連携の具体化です。政府、地方自治体、民間企業、団体で、EdTech等、学習・教育イノベーションを推進する動きがさまざまに広がっており、これらの動きと連携し、CIECが貢献することが求められます。第2の課題は会員(個人会員・団体会員)の拡大です。学校教員のみならず、教育に関心のあるさまざまな個人や団体、企業に会員になってもらい、CIECの場を通じて学び交流することが広げることが求められます。

以上を実行していくために、新会長は自らメッセージを定期的に発信するとともに、理事会、専門委員会、部会、支部ほかに呼びかけて新たな動きを具体化してきたいと思います。ともに、私たちの、私たちを充実させてくれる、人類の未来のための、新しいCIECをつくっていきましょう。

2018年8月25日