Special第15回「『インタラクティブ・ティーチング リアルセッション第2回 ルーブリックを極める』参加報告記」を公開しました
Special第15回は、「『インタラクティブ・ティーチング リアルセッション第2回 ルーブリックを極める』参加報告記」をお送りします。ぜひご覧ください。
Special第15回は、「『インタラクティブ・ティーチング リアルセッション第2回 ルーブリックを極める』参加報告記」をお送りします。ぜひご覧ください。
MOOC版「インタラクティブ・ティーチング」は今まで2万人以上が履修している人気コンテンツである。元は東京大学総合教育研究センターで、フューチャーファカルティ・ディベロップメントのカリキュラムの一環として開発されたが、3年前から一般に公開され、誰もがインストラクションの基本を学修できるコンテンツとして活用できるようになっている。
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東京大学ファカルティ・ディベロップメント | 東大FD | TODAI FD.COM | 東京大学
東京大学では、MOOC(大規模公開オンライン講座)において、インタラクティブ・ティーチングを無償で公開しています。
第15回Specialでは、2017年8月20日(日)に東京大学本郷キャンパスにて開催された、インタラクティブ・ティーチングのリアルセッション第2回「ルーブリックを極める」の参加報告記を掲載する。1回目のリアルセッションはオンラインコンテンツの全体を網羅する形で開催されたが、2回目の今回は「評価・ルーブリック」のテーマに限定した1日のセッションとして開催されたものである。
(文責: 広報・ウェブ委員会 古賀暁彦)
セミナー名:
インタラクティブ・ティーチング リアルセッション
第2回「ルーブリックを極める」
開催日:
2017年8月20日(日)
開催場所:
東京大学 本郷キャンパス
主催:
日本教育研究イノベーション
東京大学総合教育研究センター
参加者:
大学、高校の教員を中心に約80人参加
(ちなみに今回の参加者は1回目のリアルセッションのリピーターが6割ぐらいを占めていたそうだ)
この会合はいわゆる反転学習の形態を取っており、リアルセッションに参加する前に、MOOC「インタラクティブ・ティーチング」の該当箇所の視聴、同コンテンツの書籍『インタラクティブ・ティーチング』(河合出版)の該当箇所の熟読、自らが今まで作成したルーブリックの提出等、いくつかの課題がある。また、それら活動の情報は本セッションの参加者のみがアクセスできるCybozuLive上で情報共有がなされた。
本リアルセッションの目的:
学習者の学びが深まるようなルーブリックを作成・活用することができる。
本リアルセッションの手法:
反転学習による実践を重視した内容となっている。ルーブリックの活用経験等によって午後から下記の3つのグループに分けてセッションを進行した。
グループA ルーブリックを作って使っている人
グループB 堀上さん 作成したことがあるが使ったことがない人
グループC 高等学校等の先生のグループ
事前の反転学習による知識学習の復習として、以下の点について簡単な講義が実施された。
評価の意義と注意点
・形成的評価と総括的評価の違い
・適切な評価なのかを判断する観点「信頼性」「妥当性」「効率性」
ルーブリックの意義と注意点
・ルーブリックの基本構成 課題、評価観点、評価尺度、評価基準
①欠点のあるルーブリックAを改善する演習
今回示されたルーブリックは150~300字のレポート課題を評価するためのもの。まずは3分ぐらい個人で改善点および改善案を考え、つづいて3人グループで意見を交換する。つぎに提出された4つの課題を改善したルーブリックに基づいて採点し、さらなる改善点がないかを3人で検討した。最後にこのワークでの学びをまとめ、教室全体で共有した。
②改善後のルーブリックBと改善前のルーブリックAの比較
まずは3分ぐらい個人でルーブリックBの良い点を指摘し、次に3人グループで意見を交換した。
③このセッションを通じて学んだことのまとめ
個人および3人でまとめる。ちなみに私の学んだことは以下の4点であった。
・ルーブリックを作成する過程で、課題そのものもブラッシュアップされる
・評価基準は1枠に1つ、短い言葉で簡潔に記述する
・評価基準は「やや」「かなり」等の曖昧な表現の代わりに定量的な基準を入れるとベター
・何度も修正してよりよいルーブリックを目指す
各自が授業で使っているルーブリックをA3の紙の中央に張る。まず各自ルーブリックの修正を行い、その後で自分で修正できない問題点を青色の付箋に記述し、ルーブリックの周りに貼る。その青色付箋に対して、グループのメンバーが解決策を赤色の付箋に記述し貼るというワークである。グループ内でのワークが終了したら、他のグループのワークシートを閲覧した(ギャラリーウォーク)。
今までのワークを参考に、少し抽象度を上げたQuestionを考え、青色付箋に記述。それに対しグループでAnswerを考え赤色付箋に記述し貼る。Q&A集が完成したらギャラリーウォークを実施し、他のチームのQ&Aを閲覧。この時、グループに一人残し、交代で説明係を担当させる。
最後に本日のふり返りを実施し、明日に繋げることを個人→3人グループで考える。このセッションは、A~Cのグループのメンバーが1人ずつ入ることにより、より広い視点から自己のルーブリック活用が検討できる場となっている。
一言でいうと非常に画期的な内容であった。ICTを活用した教育という面においては、MOOCの動画視聴という一方的な知識の伝達だけでなく、Cybozu Liveを活用することで、参加者の事前の問題意識や、ルーブリックの共有を実施していた。参加者の多くが自発的にこの会合に参加していることもあり、事前学習の段階からみな前向きに発言や資料をCybozuに投稿している点が印象的であった。
今回参加したリアルセッションも、アクティブラーニングの手法(Think Pair Shareやギャラリーウォーク)を活用することで、「MOOCインタラクティブ・ティーチングで学んだらこのような感じでセミナーを設計できる」というお手本のような進行になっていた。1日の進行も、①知識の確認、②知識の理解促進、③実際場面への知識の活用という順番で構成されており、分かりやすい授業デザインとなっていた。
そうした主催者側の配慮や努力もさることながら、一番の成功の要因は参加者の意識の高さにあると私は考える。普段CIECをはじめ大学教育系の学会にいくつか参加しているのだが、それらの場でお会いする先生方とは属性が異なる先生方が多数参加していた。学会の場以外で、他大学や高校の先生と教育について語り合う経験があまりなかったため、非常に新鮮な経験であった。
さて、今回のテーマ「ルーブリックを極める」の一番の収穫であるが、様々な参加者が作成・活用している多様な形態のルーブリックを拝見できたことであった。それらはCybozuで共有されているので、今後じっくり拝見し、自らのルーブリックを改善する際に役立てていきたいと思う。なお、今後もこのリアルセッションを年2回の頻度で開催していく予定とのことなので、今後も半期ごとの教育実践の振り返りの場として活用していければと考えている。
最後にこの素晴らしい企画を主催していただいた(財)日本教育研究イノベーションセンターならびに東京大学総合教育研究センターに感謝の意を表したい。
日経BP社「ITpro Report」において、PCカンファレンス北海道2017のレポート記事が紹介されました。
日経BP社「教育とICT Online」において、2017九州PCカンファレンス in 北九州のレポート記事が紹介されました。
詳細は、こちらをご覧ください。
PCカンファレス北海道2017が、10月28、29日に室蘭工業大学で開催された。 特別講演について報告する。
1)「LMSを使った足場かけを通した協同学習」ハグリー・エリック : 室蘭工業大学
足場かけにより、学生の国際交流を円滑にした、ということが要点である。その際、教師の段階的指導にLMSが大きな働きをし、学生の学習意欲と英語力向上に繋がった。また英語で文化紹介をすることで自国の文化を深く知るようになり、「他国の文化を尊重し自国の文化への理解を深める」というグローバル人材育成への足掛かりとなった。 氏は、「どの科目を学習する場合でも、いきなりハイレベルな問題から始めると混乱が生じ、学生のモチベーションも下がる。学生に達成感を味わってもらいたいならば、教材や教育方法選びが非常に重要となる。「足場かけ」を上手に利用すれば、ビギナーからハイレベルの学生までそれが可能となる。」ということを具体例を示しながら述べられた。 発表では、英語が苦手な学生を国際的なオンライン交流に参加させる際の「足場かけとしてICTの活用」について説明し、その後、3年間にわたって実施中の国際バーチャルエクスチェンジの紹介をされた。日本国内28大学(現時点で31大学)と3ヶ国の学生とが英語でオンライン交流を行い、高額な旅費も必要とせずに海外の学生とつながる。さらに、その交流活動も協同プロジェクトへの参加(協同学習)も可能とするものである。2点の効果:異文化間コミュニケーション能力育成、現実世界におけるコミュニケーションに際して必要な言語スキルを磨くチャンスを学生に与えた。 昨今国際交流は盛んであるが、Moodleを用いての教材提供、話し合いの場、各自の作品のアップロードなどが可能で、アンケート調査からも「この活動は魅力的で国内外の仲間づくりでき、これからも継続していきたい」という声があがっている。
2)「高大接続におけるICTを利用したグローバル人材育成教育」川名典人 : 札幌国際大学
近年、高大接続の必要性が強く求められているが、実施がなかなか困難でさまざまな課題が指摘されている。 札幌国際大学は平成26年に「観光教育の充実に関する高大・地域連携協定」を北海道斜里高等学校と結び、斜里高等学校と将来の地域を担う人材を育成することを目的として多彩な教育活動を行なっているが、本発表では札幌国際大学観光学科の学生と斜里高等学校との連携の成功例が紹介された。活動を行うためのツールとしてICTを利用し、そのことで継続的な学習が可能になり、ICTを通して情報の収集、共有、そして発信の仕組みを学ぶことでグローバルな思考力が身につくことも非常に重要な点である。知床の観光スポットを紹介することをトピックとして行った活動を具体例としてあげられ、過去3年間実施された観光英会話集中セミナーや大学と斜里高校の間で実施したオンライン英会話レッスン、そして外国人観光客をターゲットとしたデジタル観光案内書の作成手法を紹介された。大学からは高校へ機器iPadが提供された。学習支援サイトを開設し、学生はiPad miniを使用して交流活動を進めた。アンケート調査からは、相手に伝わる英語を用いてのプレゼンを繰り返し改良されていくので英語の力の向上の手ごたえを感じたこと、障害を感じず進めもっと学びたい、など好意的な回答があった。氏は、継続していくためには核となる同じ教諭が不可欠であることも力説された。
報告:吉田晴世 大阪教育大学(CIEC副会長理事)
1日目は特別講演に加え、ワークショップとITプレゼンが行われた。ワークショップは「プログラミングってなんだ? -Swift Playgroundsで学ぶプログラミングはじめの一歩-」と題してCIEC外国語教育部会のメンバーでもある北海道大学の田邉鉄先生が講師を務められた。
いよいよ小学校で開始されるプログラミング教育を念頭においた企画で、一番聞いてほしかった室蘭市内の小中学校の先生の参加もあり、「とても参考になりました」とのうれしい感想をもらうことができた。
また、ITフェアに出展頂いた企業によるITプレゼンでは最新のIT教育機器の紹介があり興味深い内容の報告が行われた。
1日目の終了時には、室蘭工業大学生協の全面的なバックアップにより生協食堂を会場に懇親会を行い、北海道、北海道以外の参加者にITフェア出展企業の方も加わり、約40名の参加者による交流が繰り広げられた。
2日目は分科会が行われ、「e-Learningとデジタル教材」、「初等・中等教育の現状と課題」、「プログラミング教育」、「教育システムの開発と分析」の4つのカテゴリーわけによる、17本の発表があった。このうち、7本は北海道外からの発表であり、PCC北海道がCIEC会員に定着していることを強く感じた。分科会発表のうち、学生、大学院生を対象に「プレゼンテーションスキル賞」を毎年選出しており、今年度は「IchigoJam用ビジュアルブロックエディタを用いたプログラミング体験教室の実践」を発表した、大阪工業大学大学院情報科学研究科 鴻池泰元氏に贈られた。両日の参加者は約70名だった。
報告:森夏節 酪農学園大学(CIEC理事)