装いも新たにスタートするはずの「CIEC春季カンファレンス2020」は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の国内感染拡大の影響を受け、現地での開催は中止し、オンラインで行われることになりました。今回の経験は、本学会としても、各種オンライン開催の可能性・意義を検討する上で、貴重な情報になりました。

Special第22回は、COVID-19への対応からオンライン開催決定までの過程を、委員長として担当した菅谷克行さん(茨城大学)が振り返る形でお伝えします。

開催の背景

会員の研究交流や相互研鑽の促進に資することを目的として、これまで10年にわたり開催してきた「CIEC春季研究会」は、2020年から「CIEC春季カンファレンス」と名称を改め、より拡充した研究大会とすることになりました。従来の査読付き論文採録者による講演セッションに加え、一般および小中高生によるポスターセッションを新たに設置し、専門分野だけでなく、研究者・教員・学生・生徒という立場や世代を超えた、より幅広い研究交流・議論の場となることが期待されました。

ところが、査読論文(15件)、ポスター発表(29件)の採録や発表プログラムを決定したころ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の国内感染拡大の可能性が示され、最終的には、現地開催の中止を余儀なくされます。しかし、本カンファレンスの趣旨(研究発表・交流の機会を設けること)を尊重し、急遽、発表希望者のみによるオンライン発表として開催することにしました。

準備期間がほとんどない状況での試行的開催でしたが、発表者・参加者のみなさまのご協力のもと、現地開催に匹敵するほどの活発な議論が展開され、全体としてもスムーズな進行で、無事プログラムを終えることができました。オンライン発表者および参加者のみなさまに心より感謝いたしますとともに、今後とも、本学会活動への積極的なご参加と、ご理解、ご協力をお願い申し上げます。

開催概要

日時

  • 2020年3月22日(日) 10:00~15:40
  • オンライン会議システムZoomを使用

    発表件数

  • 査読論文発表:7件 (当日辞退1件を除く)
  • ポスター発表:4件

    参加状況

  • 参加者:39名
  • 最大同時ログイン数:32名

COVID-19への対応からオンライン開催決定までの流れ

1月末: 新型コロナウイルス感染症に関する国内状況・情報の収集

  • この時点では国内感染拡大は認められず、状況確認を継続することとした

2/12: 新型コロナウイルス感染症への対応について検討開始

  • 他学会の対応状況や、過去の事例(東日本大震災時)についての情報を収集

2/15: 現地開催時の対応内容の検討

  • 参加者は全員マスクを着用する
  • 会場にて消毒液、マスクの準備
  • 会場付近の病院(場所)の確認

2/18: 新型コロナウイルス感染症に関する対応について周知 (Web、ML)

  • 小中高生の参加は学校・教員側での判断を尊重する (発表業績は認める)
  • 開催の有無については、開催2週間前(3/7)までに最終決定するという方針

2/28: 小中高生ポスターセッション中止決定

  • 政府より全国の小中高校に臨時休校要請 (2/27夕刻)
  • オンライン開催に関する情報収集の開始

3/5: 現地開催中止決定(発表業績は認める)、オンライン開催実施に向けた準備開始

  • Zoomの試行(委員内)
  • オンライン発表経験者(委員)から情報収集
  • 募集範囲の決定 (発表募集対象は、査読論文、ポスター(一般)の採録者のみとし、全国的休校中の小中高生からは募集しないこととする)

3/6: オンライン開催の決定と発表者募集開始

  • 査読論文、ポスター発表(一般)の採録者に対してメールで連絡し、発表者を募集
  • 発表希望者12件(査読論文発表8件、ポスター発表4件)の申込

3/9: Zoomによる準備会議

  • 参加委員4名
  • Zoom会議の試行
  • オンライン開催の進行・準備、参加者マニュアル、座長マニュアルなどについて検討

3/13: プログラム案(タイムテーブル)確定

3/16: オンライン開催概要周知と聴講参加者募集(Web)

  • 参加申し込み方法を一部修正の上、CIECニュース (メール配信)で周知 (3/17)

3/22: オンライン開催

  • 10:00~15:40

開催までの流れを振り返って

ここからは菅谷さんへのインタビュー形式でお伝えします。インタビュアーは角南北斗(広報・ウェブ委員)です。


2月12日の対応検討開始の際に、他学会の状況や過去の事例を収集されていますね。その結果どのような情報が得られたのでしょうか。

JSET(日本教育工学会)春季全国大会(2/29-3/1開催)や、電子情報通信学会総合大会(3/17-20開催)など、2月末~3月開催予定の学会・研究会について、WebやML、職場の同僚からも情報を収集しました。当初、国内においては感染者拡大の状況ではなかったため、終息・収束することを想定し、開催可否の決断を焦ることなく状況を静観していました(この時点では、会場準備の打合せも並行して行っていました)。

しかし、日を追うごとに「開催中止」「一部オンライン開催」「オンライン試行」などの言葉を目にする機会が増えていき、徐々に本カンファレンスの開催中止も現実的に視野に入れる必要があると感じるようになりました。

過去の事例としては、東日本大震災時の春季研究会開催可否の判断について、副会長の鳥居先生から教えていただきました。ただ、今回は震災時とは明らかに状況が異なるので、これ以上詳しくはお聞きしませんでした。


3月5日に現地開催中止決定、その同日にオンライン開催の検討をされたとのことですが、オンライン開催の検討はそれ以前から構想にあったのでしょうか。

当初はありませんでした。ただ、情報収集する中で「オンライン開催」という選択肢があるということを意識するようになり、特に、2月末のJSET春季全国大会「オンライン開催(試行)」に関する情報を副委員長の布施先生と共有しながら、本カンファレンスでの実現可能性を探るようになりました。

その後、布施先生が精力的に準備を進めてくれたことが、今回のオンライン開催の大きな推進力になりました。


3月6日に発表者を改めて募集した際、採録者の反応はどうでしたか。

想定していたよりも多くの方々からオンライン発表の申し込みがあり、大変嬉しく思いました。また、当日の聴講参加者数も予想を超えたもので、かつ、全体的に温かな雰囲気で発表者やカンファレンスの進行を見守っていただいたことにも感謝しています。


Zoomによるオンライン開催の様子

今回は、急遽(経験のない状態で)試行的に開催することを決めたわけですが、発表者、聴講参加者のみなさまをはじめ、多くの関係者に支えられて、なんとかやって来れました。もちろん反省点は多々ありますが、今後のカンファレンスの開催方法や可能性(オンライン発表も含めた開催・運営など)を考える上で、とても良い経験となりました。


最終的に、オンライン開催告知から1週間ない状況での開催となりましたが、特に広報面に関して今後に活かせるようなご意見があればお聞かせください。


今回、反省点や工夫すべき点はたくさんあると考えます。今後の委員会活動の中で整理していきたいと思います。後になって考えれば、もっとうまく連携を取れればよかったのかもしれないなどと思いますが... その当時は検討や準備だけで手一杯でしたね。春季研究会の拡充とCOVID-19への対応が一度にやってきたので、とにかく大変でした。