情報通信技術の発展は、情報機器を大衆的で汎用性の高いものにしてきました。そのことによって、誰でも知的営為の生産性を高め、これまでとは異なったさまざまな成果を創造する可能性が拡がりました。

しかしその一方で、コンピュータ利用教育に関わる多くの課題や問題(例えば、大学での教育における活用方法、それを支える体制の整備、小中高における導入の仕方、学年や年齢に応じたカリキュラム編成等々)が山積しているのも事実です。この事実は、情報技術の発展を活かした新しい可能性を切り開くために次のような課題があることを我々に示しました。第一に、コンピュータ利用教育に携わる私たち自身の取り組みを強化すること。第二に、活用する側のニーズに応える情報技術の革新を求めていくことです。

私たちは、過去3年にわたって、全国大学生活協同組合連合会の主催のもとにPCカンファレンスを開催し、コンピュータ教育に関わる専門領域を越えた経験交流をおこなってきました。このカンファレンスでは、大学をはじめとするさまざまな教育現場で切り開かれた先進的事例のほか、生々しい苦労話や悩みが率直な報告として寄せられ、参加者の知的財産として共有化されてきました。PCカンファレンスの取り組みを通じ、学問分野の異なる参加者が一同に会してコンピュータ利用教育を語り合うことの意義が明らかになりました。さらに、コンピュータについての教育のみならず、コンピュータを利用したさまざまな分野での教育の工夫に関して、大会での経験交流に留まることなく、日常的な活動をする専門的かつ独立の組織の必要性が広く理解されるようになりました。

今、このPCカンファレンスに取り組んできた大学教員・院生を中心にして、これまでの教訓を活かしさらに発展させる組織を創設するという動きが実を結びました。私たちはこの組織を「CIEC(シーク)」と名づけています。CIECは“Council for Improvement of Education through Computers”の略称であり、日本語訳は「コンピュータ利用教育協議会」です。この組織は、大学から小学校までの教育関係者、研究機関、企業および大学生協の関係者など、教育を支えるさまざまな人々によって構成されます。

私たちは、コンピュータを多様な能力を発揮する「道具」として認識するだけでなく、新しい表現手段、コミュニケーション・メディアとして発展しているものと捉えています。従って、それを使いこなすことによって文化創造の可能性を追及することこそが専門領域を超えた共通の基盤であると考えます。CIECでは、パーソナル・コンピュータやネットワークの急速な普及が引き起こし始めた格差や諸問題を視野に入れながら、さまざまな活動(例えば、年一回の研究交流大会の開催や機関紙・会報等の発行、地域支部や専門部会の設立、ソフトウェアの開発・研修など)が予定されています。これらの活動を通して、情報教育の改善と改革の一翼を担い、今後さらに発展するであろう教育・研究へのコンピュータの利用の在り方と可能性とを、さまざまな学問分野にわたり探っていきたいと考えています。

私たちは、情報教育の改善と改革、そしてコンピュータを利用した教育に関心や意欲を持つあらゆる人々に、CIECへの積極的な参加を呼びかけます。

1996年7月6日