今回のSpecialでは、PCカンファレンス初の試みである「ラーニングスタジオ」の報告を掲載します。ラーニングスタジオは同時刻に、8つのテーマでパラレルに展開されました。ご自身が参加したスタジオはもちろん、他のラーニングスタジオについても“創造する学び”の一端をお楽しみください。

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予言する消費者 -未来からのデータ分析-

小野田哲弥 (産業能率大学情報マネジメント学部准教授, CIEC理事)


小野田哲弥 (産業能率大学情報マネジメント学部准教授, CIEC理事)

「ビッグデータ」や「AI」に象徴されるように、膨大なデータの入手が容易となり、高度な解析さえも無料アプリで手軽に実行できる時代となりました。しかし、そのようなICTの発展や一般化とは裏腹に、データ分析教育の多くは、依然として小サンプルに基づく仮説検証に留まっているとの問題意識を強く持っています。本スタジオは、本来学習者に必要なマインドである、データを前にした高揚感意外性への純粋な驚き、そして仮説をもとに新たな価値を創造する発想力を取り戻すことを主眼に、開催校SFCの設立当初のコンセプトである「未来からの留学生」をモチーフに開講したワークショップです。

ワークショップの前半では、以前「ワクワク感に掛けてみよう!」と題して『SFCスピリッツ』(SFCの卒業生コラム)に寄稿した内容の趣旨を、実データを絡め、クイズも交えながら説明しました。また昨年のリオ五輪時のアンケート解析によって明らかとなった「予言する消費者」の存在についても語りました。そして、2016年に大ヒットを記録した映画『君の名は。』の起点である、新海誠監督の2011年被災地訪問をドキュメンタリー映像として残していたTBS『ニュース23』の先見性などにも触れ、ワークショップ後半のグループワークへの意欲を高めました。

グループは、参加者の希望をもとに「Eテレ」「大相撲」「おでん」「温泉」「三国志」「みやげ」に分かれました。これらは事前に全国1万人に対して嗜好調査を実施した6ジャンルです。主要変数の集計結果をまとめたカードと、機械学習によるクラスタリング結果であるSOM(自己組織化マップ)を用いて考察とディスカッションを行い、プレゼン形式でその報告をしていただきました。終了時の参加者アンケートでは「予想以上に有意義で楽しかった」という評価の一方、「実践的な後半が特に良かった」という感想も複数ありました。講義形式の前半は必要最低限に抑え、後半にもっと時間を割くべきだったと振り返っています。

ワークショップの最後に各グループから1つだけ注目アイテムを挙げていただきました。数あるアイテムの中からNo.1アイテムを取り上げるチーム(おでん「大根」)もあれば、あえて異色アイテムを取り上げるチーム(甘くない土産「じゃがポックル」、ムスリム力士「大砂嵐」)、当日ならではの状況を踏まえてアイテムを選定したチーム(開催地から最寄りの「箱根湯本」)など、注目理由がそれぞれ個性的かつ説得的でした。また「若者におけるおでん=コンビニ商品」、「人柄の年配層vs.能力の若年層」(三国志)といった仮説の導出、さらには具体的なPR方法(Eテレ「グレーテルのかまど」)まで構想したチームも見られました。

以上を通して私自身、多様性の妙をいかに吸収して学習者にフィードバックすべきか、教育者としての将来的な課題をいただく貴重な機会となりました。


2017PCCラーニングスタジオ「予言する消費者 -未来からのデータ分析-」(小野田哲弥 産業能率大学情報マネジメント学部准教授, CIEC理事)

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