今回のSpecialでは、PCカンファレンス初の試みである「ラーニングスタジオ」の報告を掲載します。ラーニングスタジオは同時刻に、8つのテーマでパラレルに展開されました。ご自身が参加したスタジオはもちろん、他のラーニングスタジオについても“創造する学び”の一端をお楽しみください。

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匿名チャットの,あやしくて創造的な学び。

若新雄純 (慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任准教授,株式会社NewYouth代表取締役)


若新雄純 (慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任准教授,株式会社NewYouth代表取締役)

僕が担当させていただいたラーニングスタジオ「匿名チャットの,あやしくて創造的な学び。」は、ふだん講演やワークショプでよく使っている匿名チャットのシステムを参加者のみなさんに使っていただいて、カンファレンスのテーマになっている「アクティブ・ラーニング」と「創造する学び」を模索していく、というものでした。部屋を暗くして、お香をたいて、黙々とコメントを入力する異様な空間を楽しみながら、発見、学び、反省点がいっぱいできるスタジオになりました。

①「創造的な学び」とはどのようなものであるかを、その場で即興的に発見していく
② 匿名チャットを活用した学びの場をどのようにファシリテーションしていくか

という二つのテーマがあって、それぞれをうまくつくりだしたいという試みでした。

前者については、参加してくださった方の興味やレベルが高くて、短い時間でたくさん発見の連鎖がありました。
アクティブ・ラーニングは、教室のあり方・形式ではなく、学ぶことへの姿勢の問題で、失敗や間違いを恐れていない小学校低学年は、最初から本質的にアクティブな学びを体現しているのではないか? 創造的な学びを阻害しているのは、失敗や間違いが減点になる恥ずかしいことである、という感覚ができていくことで、学びそのものが面白くなくなっていくからではないか? 節目としてのテストはあってよいが、日常的な学びのプロセスでは間違いや失敗はむしろ歓迎すべきであり、そこから多様な発見や面白さの連鎖が見えてくるのではないか? など、間違いや失敗、テストと点数という仕組みが、学びそのものにあった「いろいろ間違っても新しいことを知ったり得たりすることはとても面白い」という価値を埋没させてしまうのではないか、ということを確認していきました。

後者については、スタジオの実践から反省点がたくさんありました。
相互発見がたくさん生まれて盛り上がってくると、徐々にその場の議論を「まとめたい」という気持ちが教室の中に生まれてきてしまいます。それは、僕自身にもです。
そして、その空間が「時間内の着地」を意識した途端、匿名の議論もどこか陳腐になってきます。
いくつかの工夫が必要で、そこまでの発見を用いて全く違う具体的な事象について議論するか、あるいはそこでグループをつくってリアルトークをするか、体を動かすか、はたまたお菓子でも食べるか、休憩とみせかけて全く違う形での議論を行うかなど、「発散」や「共感」を着地ではなく発展につなげる必要があったし、それがうまくできると、もっと面白いものにできたのだと思います。
しかし最後は、「もんもんとした気持ちを持ち帰ることで、学びの時間が帰宅まで続くのではないか?」というコメントに救われ、教わりました。
「学び」はプロセスであり、連鎖であり、本来、区切りや着地なんて必要ないはずだったのです。


2017PCCラーニングスタジオ「匿名チャットの,あやしくて創造的な学び。」(若新雄純 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任准教授,株式会社NewYouth代表取締役)

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