2017PCカンファレンスは、8月5日(土)から7日(月)までの3日間、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスにて開催されました。今回の全体テーマは「創造する学び -アクティブ・ラーニング2.0-」でした。そのコンセプトにもとづき、初日午後には恒例のシンポジウムではなく、“アクティブ”そして“創る”を意図したワークショップ型の「ラーニングスタジオ」が開講されました。

今回のSpecialでは、PCカンファレンス初の試みである「ラーニングスタジオ」の報告を掲載します。ラーニングスタジオは同時刻に、8つのテーマでパラレルに展開されました。ご自身が参加したスタジオはもちろん、他のラーニングスタジオについても“創造する学び”の一端をお楽しみください。

最初に報告を掲載するラーニングスタジオは、松村真宏氏(大阪大学大学院経済学研究科教授)による「社会的課題を仕掛けで解決しよう」です。

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社会的課題を仕掛けで解決しよう

松村真宏 (大阪大学大学院経済学研究科教授)


松村真宏 (大阪大学大学院経済学研究科教授)

筆者は「PCカンファレンス2017」で企画されたラーニングスタジオの一つとして「社会的課題を仕掛けで解決しよう」を担当した。社会的課題の多くはゴミのポイ捨てから防犯、運動、食生活といった私たち自身の行動が作り出しているので、私たち自身の行動を変えることがそれらの課題を解決する最も素直な方法になる。本ラーニングスタジオでは、筆者が取り組んでいる「仕掛学」のアプローチを用いて社会的課題を解決することを2時間15分で体験してもらうことを目的として実施した。

「仕掛け」は、行動の選択肢を増やして、その選択肢に人々をいざなうものである。したがって、上手い仕掛けを作ることができれば、人々が自ら進んで問題を解決するような環境をつくり出すことができる。そのような仕掛けの考え方を知ってもらうために、最初の45分は仕掛けの事例紹介や発想法といったミニレクチャーを行った。その後、6班に分かれて解決すべき社会課題を検討してもらい(15分)、その課題を解決する仕掛けを考えてもらい(45分)、A3の紙とペンでプレゼンテーションの準備をしてもらってから(10分)、最後に各班が検討した社会的課題とその課題を解決する仕掛けのアイデアを発表してもらった(20分)。

ここで発表された社会的課題およびその課題を解決する仕掛けは非常に多岐に渡る。以下ではその一部を紹介する。これを見れば、本ラーニングスタジオが成功だったかどうか明らかであろう。

(1)生徒の忘れ物を減らす
提出物を提出したら給食のお代わり券や指名されない券といった券がもらえる仕掛け。

(2)動く歩道で歩く
歩かないと太って見え、歩くと細く見える鏡を設置するという仕掛け。

(3)人と人との交流を促進する
質問カードと回答カードを配布し、対になる質問と回答を探すという仕掛け。

(4)歩道を広がらずに歩く
歩道を色分けする、足跡を描く、足跡が光って誘導する、踏むと音が鳴る足跡を描く、いろんな歩幅の足跡を描くという仕掛け。

(5)エレベーターの片側問題
乗る時に問題が提示され、ステップの右に立つか左に立つかで回答を選ぶ。回答が左右にばらけるような問題を出すという仕掛け。

(6)電車でシルバーシートに若い人が座る
運動できる車両を用意して、元気な人にはその車両で運動してもらうことで、結果的に疲れた人はシルバーシートに座りやすくなるという仕掛け。


2017PCCラーニングスタジオ「社会的課題を仕掛けで解決しよう」(松村真宏 大阪大学大学院経済学研究科教授)

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