開催概要

開催日 2001年7月21日(土) 

外国語教育研究部会第3回研究会

7月21日午後1時30分より北九州市若松区の北九州学術研究都市学術情報センター内 CAI 室にて行われた。参加者は大学、高校から計15名と初めての地方開催としてはまずまずの規模となった。代表世話人からの挨拶、報告者の紹介に続いて、2人の先生から実践経験に基づく報告が行われ、活発な質疑応答がなされた。また、報告終了後、休憩を挟んで、代表世話人による「WWW 環境を利用したオンライン語学教材の作成」ワークショップが行われ、参加者は最後まで熱心に実習に取り組んでいた。報告内容の概要は下記の通りである。

安波誠祐先生 (熊本電波工業高等専門学校)

「イントラネットからインターネットへ -学習者の実態に応じたネットワークの活用-」

はじめに、熊本電波工業高等専門学校の学校紹介をされた。もともとは、電波高校で通信士の養成学校であったがその後高専になり、現在は、弱電関係 (情報通信工学科、電子工学科、電子制御工学科、情報工学科) を中心に教授しているとのこと。

次に、KNCT (1984~1996) のネットワーキングの歴史的変遷を述べられ、実践例として一般科目 CAI 室での英語授業と、専攻科の「コミュニケーション英語」をあげられた。

一般科目 CAI 室での英語授業は、CAI 室の学習環境が整備され、1996年に初心者対象に CAI 室を利用できるようになったのをきっかけにはじまった。電子メールができ、ホームページが作れる領域を確保したのと同時に、ネットワークに制限をかけて、外部に対しての保護をかける等の限定的なネットワーク環境を構築し、「イントラネットを活用した英語授業」を開講した。そして、その授業環境の利点と欠点について述べられた。

その成果を受けて、専攻科の「コミュニケーション英語」科目を2000年4月より行っておられる。少人数 (21名程度) で、受講者はリテラシーも高く、ネチケットも心得ている。英語教師の役割は、テクニカルなことではなく、英語 (コンテンツ) 面でのサポートをすることであるという。Web 上のリソースを利用して、学習者のレベルとニーズに応じたもので、動機付けを高めることを目的とし、学生は楽しんで授業を受けていたようである。ここでは、実用性のあるアプローチで「役に立つインターネットを活用した英語授業」を強調された。授業内容は大きく分けて2つあり、Free Web-based E-mail (英語版) を利用してのメール送受信と、ホームページ作成でありにあて、E-mail では、実際にメールでレポート提出 (昨年度は292件) をさせたとのこと。ホームページ作成については、HTML 入門を氏自らが作り、HP 上で公開された。コンテンツは自己紹介、プロジェクト、リンク集などを書くように指導し、その評価は、自己申告+相互評価+教官による形で行ったとのこと。その後、学生の作った HP を紹介され、最後に、教師側に学習の明確な目標があり、創意工夫さえすればインターネットは無限に活用できるというまとめをされた。

講演の後、質疑応答がなされた。コミュニケーション英語のコミュニケーションとは?という質問については、HP 作成により発信型コミュニケーションを高めていると答えられた。授業評価については、詳しいアンケート調査は行っていないので今後していかなければならない課題であろうとのこと。また、語学と専門教科との連携がなかなかとれないという現状については、フロアからも多数の意見交換がなされた。評価面においては、ネットワーク授業では評価が困難であるが、考慮し対応していく必要があろうということで結論された。

田中洋史先生 (福岡県立八幡中央高校)

まず、勤務校における CAI 導入までの経過をご紹介いただいた。県内でもコンピュータの設置は最も早い方で、1987年に教科実習の一部として導入。当初はグラフィック系のプログラムや既存のアプリケーションソフトを使った教育に用いていた。その後、英語教育の一環として、外国人補助教員 (ALT) の助けを借りて、外国の教育機関との e-mail 交換などを生徒に行わせた。しかしながら、大学進学のための受験教育優先という進学校の宿命があり、またコンピュータ利用教育の有用性については教員間でも異論があるため、なかなか積極的に英語学習に活用するところまでは至っていないのが実情とのこと。要するに、生徒への動機付けとして、かつて LL が果たした役割をコンピュータ (キーボード) が代替し、ALT (e-mail) へと生徒の興味の目先が変わってきただけという印象が強い。さらに、情報リテラシー教育に関しても、語学教育との連携は全く論外で、中途半端な実習内容のためか、生徒の利用能力を涵養するには至っていない。今後は、情報機器を利用する上でのモラル、エチケットに関する教育も必要ではないかと思われる、と報告された。

続いて、田中先生からの問題提起的な報告に対する質疑応答がなされた。はじめに、田中先生と同じく、進学校におけるコンピュータの教育利用について、教育現場ではあくまで「大学入試」に束縛されるため、英語学習において、コンピュータを利用することにより、4技能のどの部分が改善されるかについて客観的な裏付けがなければ理解を得られにくいとの意見が出された。また、一時的に短期間コンピュータを利用した英語授業を展開したとしても、生徒の語学力を伸展させることは不可能であり、情報機器の操作等のリテラシー教育についても、継続的なスキル養成が必要であるという意見も複数の参加者から述べられた。一方、コンピュータ利用が単なる英語学習への動機付けにすぎないとしても、従来の受験英語に偏倚した教育手法に比べれば有効な学習手段となりうるという意見もあり、教育現場にいわゆるコンピュータに精通した人間が一人でもいれば、カリキュラムを実践していくことは十分可能とする前向きな発言もあった。

(吉田晴世、上村隆一)

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